中世から盛んになったお伊勢参り前日の華やぎを、太郎冠者の酔態を通して描く名作です。
急に伊勢参りに行く事にした主人は、前から約束のあった伯父へ、太郎冠者を使わせます。
伯父から太郎冠者が餞別をもらうと、伯父の家の者達へ土産を買わなければならないので、「お供は決まっていません」と言うように命じます。しかし、伯父に問いただされて、太郎冠者は自分が供に行くと言ってしまい、門出を祝う為に酒を振る舞われ、餞別に素袍まで出されます。一旦は断りをするのですが、伯父になだめられ頂戴することに。上機嫌に酔って帰る太郎冠者を、迎えにきた主人が見つけ叱りますが、酔った太郎冠者にはききません。さらに太郎冠者は謡まで謡い出します。が、あまりの上機嫌に貰った素袍を主人の目の前に落としてしまいます。その素袍を拾った主人が・・・。
中世の頃は、伊勢参りは一大イベントで、伊勢参りに行ける嬉しさと、伯父から素袍まで貰った嬉しさが相まっての失敗談です。この曲は、酒好きを描いた狂言のなかでも難曲とされています。一杯、二杯と盃を重ねる太郎冠者に、舞台は駘蕩とした雰囲気がただよいます。