出羽の羽黒山の山伏が大峰、葛城で修行して帰る途中、お腹がすいたため、道端の柿の木に登って無断で柿を食べているところへ、畑主が見回りにやってきます。
それを見つけて腹を立てた畑主は、木のかげに隠れた山伏をからかってやろうと、わざと「あれは烏だ」「猿だ」と声に出します。正体がばれないように山伏は、そのたびに鳴き声を真似しますが、ついに「あれは鳶(とび)だ、鳶(とび)ならば羽を伸ばして鳴くものだが、鳴かないのなら人であろう」と言われ、とうとう畑主にのせられ鳶(とび)の鳴き真似をしながら木の上から飛びおりてしまいますが・・・。
狂言とは便利なもので、何でも有るつもりで演技をします。そのつもりの演技が十分に発揮されている狂言の一つです。