主人が酒宴の帰りに、たまたま太郎冠者の家の前を通りかかったところ、上手な謡を耳にします。翌日早速、自分の前で謡を謡うように命じます。太郎冠者は、今後たびたび謡わされては困ると考え、まず酒を飲まなければ謡えないと嘘をつきます。
どうしても謡を聞きたい主人は酒を飲ませると次は、妻の膝枕でなければ声が出ないというので、自分の膝を貸してやります。太郎冠者はしぶしぶ謡いはじめますが、寝ているときは謡えるのに起きると声が出なくなるようなふりをします。
ところが酒に酔い調子に乗った太郎冠者はとりちがえ、膝枕のときに声を出さず、起こされたときに声を出してしまいます。挙げ句の果てには謡ながら舞いだす始末。太郎冠者の態度には主人に対する反抗というより、甘えている様子がうかがえ、ほほえましい主従関係がみられます。