今回はいよいよ「真一本」の作業風景をご紹介します。
修復は以下の手順にて行われました。
(1)資料の状態確認
紙や書かれている文字などの状態を確認し、今後の修復の方針を決定します。
【今回の修復作業方針】
台本は日本の伝統的な製本の和綴で綴じられているため、まずは和綴を解いて全面裏打ち作業を行う。その後一丁づつ開いた状態で撮影・デジタル化し、再び綴じ作業を行う。なお折り目の裂けた箇所や破れた箇所は、部分補修を行う。
(2)解体(和綴を解く)
和綴本は綴じ穴に糸を通して造本されているため、綴じ糸を切り、冊を解き、一丁一丁外して開き、製本前の状態に戻します。セロハンテープによる補修もこの作業の際に剥がしていきます。セロハンテープの粘着剤は、年月と共に紙にダメージを与えるので速やかに剥がします。
(綴糸切断)
(中綴じの“こより”切断)
(角布*剥がし)
(セロハンテープ除去)
*和綴の角に当てている布を「角ぎれ(角布・角裂・かどぎれ)」といいます。
本の角に布貼りを施すことで、本が丈夫になります。
(3)補修(裏打ち作業)
痛みの修復や補強のために手漉き和紙を貼る作業です。
本来の紙や体裁を考慮し、元の質感を残しながら作業を行います。
和紙は極薄の手漉き和紙を用い、接着には正麩糊を使用。
解体した台本裏面全体を和紙で覆い、その上から水と薄糊を噴霧し、刷毛で馴染ませます。さらに不織布を被せてその上から刷毛かけて和紙をしっかりと密着させます。作業が済んだら、吸い取り紙に挟んで、板と重石を乗せてしばらく乾燥を行います。乾燥には数日かかります。
(裏面を極薄和紙で覆う)
(薄糊を噴霧)
(刷毛で馴染ませる)
(不織布を被せる)
(刷毛で密着させる)
(吸い取り紙に挟む)
(重石を乗せて乾燥)
(余った和紙をトリミング)
(修復後の台本)
(裏打ち前)
(裏打ち後)
(4)デジタル化作業
再製本前に開いた状態でデジタル作業を実施しました。真一本はもともと何箇所か綴じ順が間違っていたため、役者で綴じ順を再度確認し、正しい順に直しました。
(5)再製本
デジタル作業終了後に再び紙を折り、順番に重ねて、針で綴じ糸を通し、角ぎれを貼り、より丈夫にします。その後、表紙をつけて糸で綴じて終了です。
一連の修復作業には約4ヶ月かかりました。
(ずれないように合わせて重ねる)
(中綴じ)
(角ぎれ再貼付)
(糸綴じ直し)
再製本後に、新たに作成した帙箱と桐箱に入れて、真一本の修復作業は終了です。