釣狐(つりぎつね)

猟師に一族を次々に殺された古狐が、狐釣りをやめさせようと、猟師の伯父の伯蔵主という僧に化けて意見をしにいきます。猟師の家に着いた狐は、さっそく狐の執念の恐ろしさを示す殺生石の物語を語ります。

猟師に狐釣りをやめることを約束させ、罠まで捨てさせて喜んで帰る狐でしたが、途中で罠を見つけ、餌に引き寄せられてしまいます。我慢できなくなった狐は、仲間を釣られた敵討ちに化身の扮装を脱ぎ身軽になって餌を食べにこようといって立ち去ります。伯蔵主の態度に不審を抱いていた猟師は、捨て罠にしておいた罠の様子を見に出かけます。すると餌をあさられていたので、先刻の伯蔵主が狐だったと知ります。そこで本格的に罠を仕掛け、薮に隠れて狐を待ち受けていると・・・

「猿に始まり、狐に終わる」という言葉がありますが、これは「靭猿」で初舞台を踏んだ狂言師が、「釣狐」の狐役を演じて初めて一人前となるという意味の言葉です。それほど、技術的にも精神的にも非常に高度な力が演者に要求される大曲です。